この数ヶ月、衝撃的なニュースが続いて報道されました。 思わず、ワイドショーや週刊誌に釘付け…なんてこともあるのでは? でも実は、そのセンセーショナルな記事や報道、 知らず知らずのうちに見ているアナタのココロに影響を与えている可能性が…! メディアが報道する情報とワタシたちのココロの関係、ちょっと考えてみませんか? |
名作が生んだ副産物、“ウェルテル効果”。
メディアが人のココロに与える影響について考えるとき、
まず知っておきたいのが“ウェルテル効果”という言葉。 この言葉の由来になったのは、1774年にゲーテによって書かれた「若きウェルテルの悩み」。 読んだことのある方もいるかもしれませんが、ごくごく簡単にストーリーを。 主人公ウェルテルはある女性に恋をするのですが、その女性には婚約者が。 若きウェルテルは、まさにタイトル通りに悩みに悩んだ末、 彼女なしの人生を送るよりは…と最終的にピストル自殺をしてしまいます。 この悲恋物語はヨーロッパ中で大ヒットしたのですが、その人気度の高まりに応じて思わぬ事態が。主人公をまねてピストル自殺を図る若者が急増してしまったのです。 この現象を受け、社会学や心理学の世界では、 知名度の高い人や人気のある人が自殺すると連鎖的に自殺が増えてしまうことを、 “ウェルテル効果”と呼んでいるのです。 |
ウェルテル効果とメディアの関係。
この悲しきウェルテル効果を、メディアと関連付けて調査したのが、
社会学者のディヴィッド・フィリップス氏。 フィリップス氏は、過去の新聞を紐解き、20年間分のアメリカの自殺件数を調査。 すると、新聞の第1面で自殺が報道されると、その日の自殺が平均60件増えることがわかりました。さらに、メディアがその自殺の方法を報道すると、同じ方法での自殺が続いて起きていました。 いじめを苦にした自殺、ネットで仲間を募っての練炭自殺…。 残念なことに、これまで日本でもウェルテル効果が見られた例があるようです。 |
流されやすい、ワタシたちのココロ。
さらにフィリップス氏は、ウェルテル効果が自殺以外にも見られることにも言及。
たとえば、注目度の高いボクシングの試合が放送された翌週は殺人事件が増える、 という調査結果も報告しています。 しかも、白人ボクサーが負けると白人が被害者となる事件が増え、 黒人ボクサーが負けると黒人が被害者となる事件が増えていたそう。 つまりこの場合、メディアが放送した攻撃的なシーンが人々の攻撃心を刺激することや、 無意識のうちに相手(被害者)の選択にまで影響を与えている可能性が示唆されているワケです。 なんか全体を通して暗い話になってしまいましたが、 ウェルテル効果のコワイところは、本人はおそらくそのことを意識していない、ってこと。 ワタシたちは普段、特に「何かを覚えよう」としてメディアを見てるわけじゃないですよね。 でも知らず知らずのうちに、さまざまな情報がワタシたちの中にはインプットされているんです。 しかも、そうして蓄積された負の情報たちは、事件がセンセーショナルに報道されればされるほど、 蓄積された負の情報たちは意識の中からとても引き出しやすい状態に。 そしてふとした瞬間に、ココロの中の闇の部分と結びつき、思わぬ行動の引き金になってしまうかもしれない、ってコトなんです。 かといって、この時代、こわいからすべてのメディアから情報を得ないようにする、なんてムリな話。 だからまずは、ワタシたちのココロはとても情報に流されやすいものだ、ってことを心得ておく。 それがわかっていれば、万が一自分の中でウェルテル効果が起こりそうになったとしても、 「ちょっと待って、今ワタシ、流されてない?」と立ち止まって考えることができるハズです。 |
事件が衝撃的であればあるほど、メディアはそれを大々的に取り上げます。 見ているワタシたちも、ついどんどん刺激的な情報を求めてしまいがち。 情報を知ることは興味深いことだし時には重要なことだけど、 一面でこんなキケンもはらんでるってことを心に留めておきたいですね。 |