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2009.02.09.更新
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■ Cocco~「ちむぐるさー」の心を体現するシンガーソングライター

監督が泣きながらカメラを回した。

映画「大丈夫であるように」のポスター。沖縄の桜坂劇場では2ヶ月に渡って上映されている。
映画「大丈夫であるように」のポスター。沖縄の桜坂劇場では2ヶ月に渡って上映されている。

 映画「歩いても歩いても」などで知られる是枝裕和監督のドキュメンタリー作品「大丈夫であるように――Cocco 終わらない旅」が話題を呼んでいる。昨年12月から全国8ヶ所の映画館で公開され、ロングランをつづけている劇場も多い。「泣きながらカメラを回したのは生まれて初めてだ」という監督のコメントも印象深い。作品のレビューや解説についてはここでは披露しない。が、この作品の取材対象であるCoccoについて少し紹介しながら、沖縄の言葉「ちむぐるさー」について論じたいと思う。

剥き出しであるがゆえの神々しさ

筑紫哲也氏と対談するCocco。
TBS NEWS23より。
筑紫哲也氏と対談するCocco。
TBS NEWS23より。

 Coccoは1997年、シングル「カウントダウン」でメジャーデビューを果たし、セカンドシングル「強く儚い者たち」で有名になったシンガーソングライターだ。JALのキャンペーンソングにも起用されているので記憶にある方も多いと思う。2001年に活動を休止。その間彼女はときに「リスカ(リストカット)の女王」という異名を持つこともあり、そうした問題を抱える若い女性から絶大な支持を得た。活動を休止したのは、「本当に歌が好きなんだと思った。好きな歌を商売の道具にはしたくなかった」(TBS NEWS23 筑紫哲也氏との対談でのコメント)ためだという。

さまざまなものの悲しみを自身のうちに取り込み歌うCocco。 CoccoオフィシャルHPより。
さまざまなものの悲しみを自身のうちに取り込み歌うCocco。 CoccoオフィシャルHPより。
 彼女が再び人々に向けて歌を歌い始めたのは2003年夏、「ゴミゼロ大作戦~正しい海への道のり ラブレンジャー参上~ 『もしも歌が届いたら 海のゴミを拾ってね』の巻」というライブイベントを自身で企画したところからだ。「世界平和といっても、まず自分自身の足元のことから何か始めなければならないのではないか」という思いが彼女を突き動かした。このときのCoccoの腕は相変わらず細く、ライブ中にも泣き出しそうになる場面があり、決して「逞しさ」というものを感じさせない。だが、しかし、そうしたこともすべて剥き出しにして歌い、語る彼女には突き抜けた神々しさがあった。沖縄に生まれた彼女が沖縄の女性として沖縄に何を返していけるのか、ということを真剣に模索し、行動する。その姿は多くの人の胸を打った。

沖縄の女性のうちに脈打つ「ちむぐるさー」の心

 Coccoを通して沖縄の女性全般を語るのはやや乱暴な感じもするが、しかし、多くの沖縄の女性の骨身に染み付いているものの一つとして「ちむぐるさー」の心というのがあると思う。「ちむぐるさー」とは沖縄の言葉で、意訳すれば「かわいそう」になる。漢字をあてるとすれば「肝(ちむ)苦(くる)さー」で、「自分の肝が痛い」ということになるだろうか。つまり、相手の「かわいそう」は自分の「肝が痛む」ことなのである。Coccoが沖縄の基地問題や環境問題に関心を持ち行動していることは、何も、大上段を振りかぶった「社会運動」なのではなくて、ただ単に「肝が痛む」からなのだと思う。しかし、生理的なものといっていいこのような単純さこそが実はもっとも説得性を持ち、多くの人の胸を打つことにもなっていくのだと思う。映画・「大丈夫であるように――Cocco 終わらない旅」で監督が、泣きながらカメラを回したということは冒頭にも紹介したが、監督を泣かせたのは、Coccoが泣いていたからだと思う。それも心から。


 「ちむぐるさー」の心を持つ、ということはなかなか大変なことだとは思う。他者の痛みをそのまま自身の痛みとして対処していくことは並大抵なことではない。しかし、沖縄の場合、これが言葉の中に入り込んでいるほど、ある意味「スタンダードな」発想になっているようにも思う。以前掲載したコラムでも紹介したが、私が野宿しているのを知って「布団を持ってきてあげるから食堂の座敷に寝泊りしなさい」と初対面であるにもかかわらず申し出てくださった食堂のお母さんも、まさに「ちむぐるさー」の心であったし、沖縄では「オバァのかめーかめー攻撃」といって、お腹がはちきれそうになるまでどんどん食事を出してくれるオバァ(おばあさん)の気持ちも、自身が戦争でひもじい思いをした経験があるからこそ出てくる「ちむぐるさー」の心によるものだと思う。


 平和を愛する沖縄の文化的な背景には、こうした沖縄女性の高い精神性があるのだと思う。Coccoはいわば、それを体現したシンガーだということもいえると思う。スクリーンでそれを確かめてみるのも、沖縄を理解するうえで参考になるのではないだろうか?

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WRITERS NOTE
【NAME】佐々木仁孝
沖縄は「癒しの島」とマスコミなどに謳われて久しいですが、実際の沖縄生活はどうなのか。移住者(ときに沖縄県民)を取材し、その実態をご紹介します。
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