私を幸せにするライフスタイル BONITA message ~ いろいろな女性が自ら発信するコラム型WEB
私を幸せにするライフスタイル BONITA message
2009.01.26.更新
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■ 野人になったIT社員の話 その5(シリーズ最終号)

「ニラカナちゃん現象」が起こる。

ニラカナちゃん春色バージョン。
ニラカナちゃん春色バージョン。
 技術的には「がんばるくん」(前回掲載記事参照)の出来損ない、思いとしては沖縄に遍満する「いのち」の象徴をイメージして作り出したガラスのマスコット・「ニラカナちゃん」だが、そのゆるい表情から思いのほか人気を博した。それは、お客さんと対面してひとつひとつオリジナルのニラカナちゃんを作っていたこととも関係している。一体のニラカナちゃんを作る間に、お客さんの「人生相談」に乗ることが、ままあった。そしてそれが、「ニラカナちゃんをいただいてから元気になりました」という報告につながっていった。やがてそんなことが口コミで広がり、「ニラカナちゃんを作ってもらうと幸せになる」と評判になった。私としては、「野宿しながらでも、何も持っていなくても、生きていくことは出来る。沖縄の持つ生命力に助けられているんです」という話しかしていないつもりなのだが、工房を訪ねてくるなり、「わたしにニラカナちゃんを作ってくれますか?」と大粒の涙を流すお客さんがしばしば現れるようになり、「事の重大さ」に後になって気づくことにもなった。

スピリチャルカウンセラーの目にもとまる。

「ニラカナ会」の方が作ってくださった、ニラカナちゃんケーキ。
「ニラカナ会」の方が作ってくださった、ニラカナちゃんケーキ。
 不思議なことはつづくもので、こうしてひとたび作者の手を離れて「ニラカナちゃん=癒す力を持った妖精」だと評判になると、今度は内地からある有名な「スピリチャルカウンセラー」という方が工房を訪ねてこられ、
「これはものすごい癒しの力を持ったものよ!」
 と絶賛し、カウンセリング用に、と10色のニラカナちゃんをオーダーしていくこともあった。このカウンセラーから紹介を受けてしばしば、何か人生に困った人が工房を訪れては、県外からもニラカナちゃんが求められるようになった。やがて沖縄では、ニラカナちゃん愛好家の会が結成され、ニラカナちゃんは、沖縄三越でも販売されるようになっていった。

それ見たことある、やんばるの森の中で!

工房のニラカナちゃんコーナーに書かれているキャプション
工房のニラカナちゃんコーナーに書かれているキャプション

 そんなある日、工房を訪ねてきた親子が工房の「ニラカナちゃんコーナー」に書かれたキャプションをしげしげと眺め、「ほら、やっぱり妖精なのよ!」と叫んだ。
「ね、あそこで見たのは、やっぱり妖精で間違いないよね」
 と小学2年生の娘さんが言えば、お母さんも、「本当にいるんだね」と感動で目を輝かせている。その様子がなんとも不思議だったことと、どこかのガラス工房が真似をして作り始めたのかもしれないと思い、その親子に訊ねてみた。
「これをどこの工房でご覧になったのですか?」
「工房じゃないです。森の中。やんばるの森の中」
「はぁ、森の中、ですか?」
 と不思議がる私に、
「写真もありますよ」
 とお母さんの方が写真を差し出した。

親子が持っていた「ニラカナちゃん」写真
親子が持っていた「ニラカナちゃん」写真
そこに写っているのは、紛れもなくニラカナちゃんだった。しかも、画面いっぱいにいくつものニラカナちゃんが写っている。これは、ニラカナちゃんを作り始めた頃、私がイメージしていた姿とまったく同じだった。
「この妖精の名前は、ニラカナちゃんって言うんですか?」
 とお母さんに訊ねられた。
「そうですが、それは勝手に私が名づけたもので、本当の名前はわかりません。インスピレーションを受けて作ったことは事実ですが、モデルがあったわけではなく、私の完全なオリジナルだと思っていました」
 と答えると、不思議なことってあるんですね、と親子はしばらく興奮した様子で、「せっかくだから」といって2体のニラカナちゃんを購入された。そのとき、小学2年生の娘さんから、「これはプレゼントします」とやんばるの森の中に写っているニラカナちゃんの写真を頂いた。
「あまりに怖かったので、ユタにみてもらったんですけど、悪い霊でも低級な霊でもないので、安心しなさい。精霊の類ですといわれて、安心していたんです。今日工房で、妖精だってわかったので、本当に安心できました」
 親子はそういって深々と頭を下げ、工房を後にした。


 当初、1ヶ月の予定で訪れた沖縄で何故かガラスを触ることにもなり、その作品がまさか沖縄三越でも販売されるようになるとは、誰が想像できただろうか。また、その作品を軸に、幸せな人の輪が広がっていき、県内外に多くの友だちができたことも、私にとっては幸せなことだった。

琉球ガラス工房でで再起--おきなわ文学賞を受賞。

ニラカナちゃんからは本当に多くのことを教わった。
ニラカナちゃんからは本当に多くのことを教わった。


 「考えない、がんばらない、我慢しない」と自分に言い聞かせて野宿生活をつづけてきた結果、自分でも想像できない展開に人生が開けていったことは、その後の人生を歩む上で、大きなヒントになった。また、小説を書く上でも、このことは大きなヒントになっている。自らのオリジナルだと思って作り出したものが、もし、万人に何らかのインパクトを与えるものになったのなら、それは「ニラカナちゃん現象」と同じようなことが起きているのかもしれない。「遍満するいのち」に育まれ、その形をとって生まれてくる必然が、それにはあったということだろう。昨年11月には「風を読む――風土に培われる琉球ガラス」と題する随筆で「おきなわ文学賞」を受賞させていただいた。沖縄の琉球ガラス工房で命を吹き返し、新しい人生を歩み出した私にとっては、他のどの賞よりもありがたく、嬉しい賞だ。


 沖縄には「力」がある。
 それはマスコミで喧伝されているような、リゾートや癒しとひとことで言えるような薄っぺらいものではなく、生命の根底から下支えするような、何か、である。その「力」に触れるためには、こちら側もそれ相応の覚悟と心構えが必要だ。この計5回のシリーズでそのことを少しでもお伝えできたならば、この連載も成功といえる。

 読了ありがとうございました。


(シリーズ・完)

グラスアート青い風  
http://www.okinawa-umikaze.com/aoikaze/
ニラカナちゃんのある工房

9:00~18:00(年中無休)
【住所】沖縄県読谷村高志保915 Gala青い海内   TEL098-958-2000  info@okinawa-umikaze.com
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WRITERS NOTE
【NAME】佐々木仁孝
沖縄は「癒しの島」とマスコミなどに謳われて久しいですが、実際の沖縄生活はどうなのか。移住者(ときに沖縄県民)を取材し、その実態をご紹介します。
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