ここ10年ほどで、すっかり一般に定着した言葉、“ストーカー”。 ある特定の人に固執し、どんなに拒否されてもしつこくつきまとったり、 昼夜を問わず電話をしまくったり、大量のメールを送りつけたり…。 ストーカーのニュースを見ても、 「ストーカーをする人の心理なんて理解できない!」と思う人がほとんどのハズ。 でもその根っこにあるのは、誰もが経験するアノ感情なんです。 どんな人がストーカーになりやすい?どんな心理でその行為をはたらくの? そのココロの闇、ちょっとのぞいてみましょう。 |
ストーカーのタイプ
“ストーカー”と一口にいっても、その対象となる相手はさまざま。
精神医学者の福島章氏は、ストーカーを以下の5タイプに分類しています。 ①イノセントタイプ あまり面識のない相手に対し、自分に都合のよい妄想を膨らませる。 ②挫折愛タイプ 恋愛関係や友情が壊れたり、自分の愛情が受け入れられなかったときに起こる。 ③破婚タイプ 結婚生活や内縁の関係が破綻したとき、その破局を受け入れられずにストーカーになる。 ④スター・ストーカー テレビや雑誌などのメディアを通し、有名人に対して妄想を膨らませて関係を迫る。 ⑤エグゼクティブ・ストーカー 憧れの上司や先生に対し恋愛感情を膨らませる。 ときには、相手を事実無根のセクハラなどで訴えることも。 これら5タイプのうち、特にやっかいなのが②挫折愛タイプと③破婚タイプ。 この2つのタイプでは、被害者にとって、ストーキングしてくる相手はかつての恋人やパートナー。 もともと親しい間柄な上に、どこかに「自分にも責任がある」という気持ちもあって、 「話せばきっとわかってくれる」と事を穏便にすませようとしてしまいがち。 するとストーカーのほうは、被害者のこういう態度を、 「自分の気持ちをわかってくれている」とか「やっぱり向こうにも未練があるんだ」 というように勝手に解釈して、よりエスカレートした行動に出てしまうのです。 |
暴走する“妄想性認知”
「いつでも相手を独占していたい」「相手をずっと見ていたい」
「一緒にいないときも、自分のことを考えていてほしい」 …ストーカーたちの中心にある思いです。 でも、ちょっと胸に手を当ててみて。 こういった思い、ここまで極端じゃないにしろ、覚えのある人多いのでは? そう、この気持ちって、アノ感情によく似てますよね。 熱烈な恋愛感情。誰かをすごく好きになったときに、ちらりと抱くココロ。 でも、恋愛=ストーキングになるかというと、決してそうじゃない。 大多数の人が、ストーカーになることなくその気持ちと付き合っています。 それは、簡単にいえば、人には理性が備わっているから。 「ここまでしたら相手が嫌がるだろうな」ってことがわかるから、です。 私たちは、人と付き合う中で、“相対的関係性の認知”というものを身につけています。要するに、自分のことだけじゃなく、相手のことを思いやることができる能力。それによって、相手の立場になってその心情を推し量ることができているわけです。 でも、ストーカーには、これが決定的に欠如。 相手が嫌がっているという事実を受け入れることができず、 自分の感情だけが暴走する“妄想性認知”の状態に埋没。 でも、それはあくまでも妄想で、現実にはただの“片思い”。 そこで、現実と妄想との隙間を埋めるために、つきまとったり電話をしたり…。 相手が心底嫌がっていることに対しても「もっとしてほしいから、わざと冷たい素振りを見せている」なんて、自分の妄想にとって都合のいい解釈をしてしまうのです。 |
ストーカーをつくらないために
そんな負の心理構造をもったストーカー。
自分がそうならないことはもちろんのこと、 ストーカーをつくらないためにはどうしたらいいのでしょうか。 ジャーナリストの岩下久美子氏は、親子関係の重要性を指摘。 子どもの頃、虐待や過保護などによって強い心のコントロールを受けた人は、 うまく相対的関係性の認知の獲得ができず、大人になったとき、 愛情欲求がストーキングという形で出てくることがあるそう。 また、ストーカーを放置しないことも重要。 平成12年に「ストーカー規正法」が成立し、つきまといや待ち伏せだけでなく、 度重なる無言電話や、わいせつな写真を送りつけるなどのことも法的に取り締まれるように。 過去には自分で解決しようとして事件につながった例もあるので、 なるべく早く公的機関に相談にいくことが大切です。 |
小さい頃の親子関係が、ストーカーの芽につながる。 しかも、根っこにあるのは、誰もが感じておかしくない恋愛感情。 そう考えると、ストーカー問題って、決して他人事では、ナイ。 そのことだけ、ちょっと頭の片隅にでも置いていただければ。 自分がそうならないために。自分の子どもをそうならせないために。 |